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「あ、な、なーんだ!そういうことね…………あはは」
冷静になった冬音は目を泳がせながらぎこちない笑顔を瑠璃に見せてそう言った。
「今、冬音ものすごい形相してたね」
隣ではまたもやプププと雪が笑っていた。
「………………黙れ浮遊野郎」
「ひど!!!」
◇◇◇◇◇
「ほら、ここ」
それから数分後。ようやく瑠璃達は階段を半分まで登り、エレベーターに着いた。
エレベーターもこの消界の雰囲気に合ったアンティークなエレベーターだ。
冬音は膝に手をついてぜえぜえしていたが、瑠璃は慣れているのか余裕そうだ。
雪は……………言うまでもない。
チーンと音が鳴り、冬音が腰を上げると瑠璃がエレベーターの中に入っていった。
「ここから一気に頂上まで行くよ」
そう言って瑠璃はエレベーターのボタンを慣れた手つきでカチャカチャといじる。
一瞬だけエレベーターが揺れ、ガタガタと音を立てながら上がっていった。
途中これ壊れてるんじゃないかと思うときがあったが気にしないことにした。
しばらくして、またチーンという音とともにエレベーターの扉が開いた。
「着いたよ」という瑠璃の声に応じて冬音と雪はエレベーターを出た。
本当に頂上のようだ。
下には長い長い階段が奥まで続いている。
エレベーターのありがたみを知った。
「それで、道はどこなの?瑠璃少年」
雪がエレベーターから降りた瞬間間髪いれずに瑠璃に聞く。
「あそこの扉、見える?あの奥に道があるんだ」
そう言った瑠璃の指差す方向にはよくよく見たら、大きめの所々に金の装飾がしてある扉を見つけた。
消界自体が割りと暗めなので言われなければ気づけないだろう。
「…………入ろう」
それを視認した雪はいつもと違う真面目な表情になりながら言う。
少し緊張感を覚えた。
特別道には霊はうろついていないと雪から聞いたが、それでも一抹の不安は残る。
雪の表情からもそれがうかがえる。
冬音は意を決して扉に向かってゆく瑠璃達の後に続いた。
瑠璃が扉の金の取ってに手を掛けて引いた。
ギギギと少しきしんだ音と共に扉が開く。
冬音はごくっと唾を飲み込み、扉の先に広がる景色を覗いた。
「………やっぱりね」
雪の呟きと同時に見えたのはいつくもに分かれている道。
というより廊下という方が正しいか。
どの通路も奥が見えなくて少し怪しい雰囲気がある。
「元々あった道がぜーんぶ現れてるね……
瑠璃少年、現世のトビラへの道は分かる?」
「…………いや、元々見えてた1つの道も形が変わってる。だから全然分かんない」
「現世のトビラ?」
二人のやりとりに聞き慣れない言葉があり聞き返すと雪がそうだと言い説明した。
「消界には2つのトビラがあって、1つが消界のトビラ。俺達が今入るために通ったとこ。もう1つが現世のトビラ。文字通り現世に戻ることが出来る。まぁ入口と出口みたいなものかな」
「へぇ………あ、てことはこのどれかの通路の先にその現世のトビラがあるってこと?」
雪の話と今の瑠璃の感じからそう推測する。
「そうそう、だから消界から出るには必ず道を通って現世のトビラを通らなきゃならないんだ」
「そうしようとした俺の守護霊は多分この沢山ある通路で迷って別の所に行ってしまったんだと思うけど」
雪の後に続いて瑠璃も付け加えた。
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