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と、すぐに切り替えて瑠璃にもそう忠告をした。先程の謎のデコピンで大分不服そうだが、こくりと瑠璃は頷いた。
「よぉし、じゃあ二人共気をつけてね」
いつもの明るい調子で雪は言い、沢山ある中でど真ん中の通路にすい~っと入っていった。
それに続いて瑠璃が右側の通路に移動する。
「じゃ、架宮は左側な。気をつけろよ」
瑠璃はそう言い残し、真剣な表情で通路に入った。
「うん」と返事をして軽く手を振った後、冬音はじりじりと左側の通路に歩み寄り、通路を恐る恐る覗いた。
一人になった途端心細くなったので、一つ一つの挙動がおぼつかない。
だが、案の定通路は明るめだった。
「あれ、雪の方は割と暗いように見えたんだけど……」
もしかして、雪なりに気を遣ってくれたのだろうか。
だとしたらかなりありがたい。
暗い通路を一人でましてや人間がいない世界で歩くとなると誰でも恐怖を感じるだろう。
明るいだけでも安心感がある。
気を遣ってくれた雪のおかげで少し足が軽くなり、ようやく通路に足を踏み込めた。
通路はエレベーターや階段同様アンティークなデザインだった。
所々にランタンや蝋燭が置いてある。
明るいのは助かるが逆に不気味にもなってくる。
冬音ら急いでその考えを振り払い、歩幅を広げた。
◇◇◇◇◇
10分後。冬音の中に渦巻いていた少しの恐怖は、いつの間にか消えていた。
理由は単純。
道が………………長い。
階段のデジャヴすら感じる。
同じ光景が永遠と続いている。最初は何か出てくるのではないかと怯えていたが、特に何も起きないので怖くなくなってきた。
にしても長いなぁ……、何かしらはあってほしい
冬音がそんなことをぼーっと考えていると、その思いに答えてくれたかのように、目の前に違う光景が現れた。
扉だった。深みのある焦げ茶色の。
冬音はそれを見た瞬間、怪しさよりわくわくの方が勝ってしまった。
あれの奥に、瑠璃くんの守護霊さんの手がかりみたいなものがあるかも………!!
先程のおどおどした動きはどこへやら。
完全に楽しんでいる様子だ。
呑気なことを考えながら扉の前へ駆け寄る。
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