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取ってに手を掛け、ゆっくりと覗くように扉の先を見る。
キィィと、少しきしんだ音がした。軽く押しただけだが、随分と年季が入っているのだろうか。
さぁて、一体何が────
冬音は、扉から顔を出した瞬間固まった。
扉の先にあったのは部屋。
かといって何かあるわけでもない。壁の柄や蝋燭こそ全く同じだ。
ただただ置いてある、通路を少し広げたかのような何もない場所。
それだけで不気味な気もするが、冬音はそんなことはどうでもよかった。
やはり、ここは霊の世界。
こういったものは普通に存在するのか?
人魂と、狼。
冬音はすすす~っと扉を閉めた。
完全に扉が閉まったのを確認して、バッと体を後ろに向ける。
せ、雪のバカやろぉ……………
冬音は冷や汗をかきながらここにはいない雪に対して怒りをぶつけた。
こういう消界に霊はほぼ出ないって言ったじゃん!だから安心してたのに!
しかも人魂とかトラウマでしかないのに!!
ひたすら心の中でわめいた。
そう、冬音は消界に入る前、あることを雪から聞いていたのだ。
今の場合、ここは瑠璃の守護霊の消界。
だから他の霊が入ることはほぼない。
入るとしたら水霊みたいな霊に限るだろう。
と、説明していたから冬音は安心していた。
何も心配していなかった。
なのに、さっき視界に入ってきたのは人魂と狼。人魂は姿形からして間違いなく霊。しかも冬音は人魂に襲われた過去もある。狼のほうも暗くてちゃんとは見えなかったが、透けていたような気がした。
………………よし、引き返そう
冬音は冷静な判断が出来ずにいた。
今雪がいないこの状況で霊と接触するなどもっての他。逃げるのが絶対に間違いなく正しい。
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