サント・マルスと混沌の邪神 ~ユーラント編~

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翌朝になってもゲルマンは戻って来なかった。長老の家からジルカメスが 出て来た。 「で、どうする?。答えは出たのか?。」 「やはり・・・思い切って行ってみようかと思って。」 「そうか。なら急いで出発だな。」「私も行こう。」 そう言ってくれたのはペガソーサ。 「そうか、じゃ早速・・・。」 ジルカメスはペガソーサに跨ろうとした。「いや、待てよ。」 ユーリウスはペガソーサに宝玉に入るように言った。 「親父が居る場所は何処かわからないんだぜ。ペガソーサで探し回るより、 ユーラントの転送魔法で行った方が確実かもしれない。」 「それもそうか・・・。」  ユーリウスは頭の中に話し掛け、ユーラントに連絡をしようとした。 「悪いが、その前にデルシャに立ち寄って貰えぬか?。とある事情で アラトゥーザの力を借りたいそうだ。」「アラトゥーザの、力?。」 「用事はすぐに済むと思う。頼む。」 ユーリウスは早速仲間達にこの話をした。 「メセトハプラがクレア島から撤退したから、デルシャはどうなっていたか 気にはなっていたからな。」 「親父さんの事は気になるだろうがな。」 「いや、案外とひょっこりと帰ってきてるかもしれない。まずは、デルシャが 先だ。」 という訳で、ユーラントの転送魔法により、デルシャに辿り着いた。 「おお、これはロナウハイド殿!!。」 デルシャの学者達は早速話し始めた。 「実はな、古い記録を整理し、オリエンタポリス神話を新しく編集し直そうと していたのだが、どうしても理解不能な暗号のような文章を発見したんだ。 我々の力ではどうやっても解読不可能だったんだが、ひょっとしたら オリエンタポリスに一番近い所にいた精霊アラトゥーザなら解読できる のでは、と。」「ええ、私があ・・・うーん・・・。」 アラトゥーザがユーリウスの髪の毛の中からひょこりと顔を出した。 「これなんだが・・・。」 学者は端が何か所か欠けている石板をテーブルの上に置いた。 アラトゥーザはユーリウスの頭から石板の上に飛び降りた。 「・・・ええっとぉ、これは・・・。」 皆息をのんでアラトゥーザに注目する。「『詩』・・・かな。」 皆一瞬唖然とする。 「・・・だからぁ。それは分ってるんだ。この『詩』の内容の辻褄が合って ないから訊ねているんだろう。」「・・・あ、そうなの。なぁんだ。」 「普通に考えても分かるだろう。」ユーリウスはそうツッ込んで石板を覗き 込んだ。 石板には、古代デルシャ文字と何かのマークが刻まれている。 「これって何?。」ユーリウスは指さした。「詩」の頭の部分に「Α」と いう文字と文末に「Ω」という記号がある。 「これは古代のデルシャ文字で、二十四種類あるうちの『Α』は一番最初、 『Ω』は一番最後って意味だよ。」 「・・・ふうん、『最初と最後』か。・・・この文字、確かどっかで見た 覚えがあるんだが・・・どこだったかなぁ。」 「・・・この配置は!!。」背後から叫ぶ者がいる。 「うおっ・・・、びっくりした。・・・居たのかよ。」 守護神セルデゥスがいつの間にか来ていた。 「私が立っている台座の模様にこんな形で文字の配置が刻まれている。何か 関係があるのではないか?。」「そうなのか。じゃ、観てみよう。」 ユーリウス達はセルデゥスが普段像として立っている台座を見た。  台座には確かにその文字と縦に棒のような模様が不規則な太さで刻まれて いる。 「なんでこの縦線、均等な模様じゃないんだ?。」ユーリウスは口に手を 当て考えた。 「・・・まてよ・・・。」 ユーリウスは石板を持ってきて、台座の縦線の模様と照らし合わせる。 「太線が二文字、細線が一文字・・・。そこに当てはまる文字を抜き出して みると。」 石板の「詩」の文字から台座の縦線と重なる部分を抜き出す。 「なんて書いてある?。」 ユーリウスはアラトゥーザに訊ねた。 「・・・これ!!。ええと、『墓標の後ろ』って!!。」 「やっぱ文章になってたのか。『墓標』って、墓?。誰の?。」 「流れからいって、オリエンタポリス?。」 「しか、ないと思うけど・・・。」 という訳で、敷地内にあるオリエンタポリスの墓標へ向かった。 途中歩きながら皆ユーリウスに訊ねる。 「なんで、そういう文章になっているって分かったんだ?。」 「暇つぶしにやっていたネットの『脱出ゲーム』の謎解きの中にはそんなのが いっぱいあるんだ。それがまさかこんなところで役に立つとは。」 「また、コンピューターとかいうモンか。魔法みたいなやつだよな。」 オリエンタポリスの墓は、流石にこの国の建国者だけあって重厚且つ巨大な 墓だ。 「『墓標の後ろ』って事は・・・、墓石の裏って事だよな。」 そう言いつつ、ユーリウスは後ろに回った。「あ!!。」 墓石には長い「詩」が刻まれており、石板と同じように「Α」と「Ω」の 記号がある。ユーリウスは石板の時と同じように、墓標の文字を抜き出し、 メモした。 「読んでくれ。」アラトゥーザはユーリウスからメモを受け取り、読んだ。 「・・・『神殿の奥、始めと終わりの模様の間を掘り起こせ。』だって。 この始めと終わりって、さっきのヤツとおんなじかなあ。」 「多分。まずは試してみようぜ。」 今度は神殿の奥へ向かった。
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