サント・マルスと混沌の邪神 ~ユーラント編~

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ユーリウス達は手分けして例の文字を探した。「これか・・・?。」 「だがよ、『掘り起こす』っても、床板だぜ。この床板を外して下を 掘れって事か?。」 ジルカメスも悩んでいる。 「とりあえず、やってみるしかないな。」ユーリウスは皆に手伝ってもらい、 石の床板を外した。しかし、土はなく、何か長い箱のようなものがある。 「これか・・・?。」 箱を開けると、麻布に包まれた長い包みが出て来た。ユーリウスは静かに 麻布をはぎ取っていく。一枚、二枚と剥がしていくが、なかなか中身には お目にかからない。 「随分と厳重なんだな。」 ジルカメスは側で見ていて呟く。四枚、五枚・・・。更に剥がしていくが、 中身は出てこない。  ユーリウスは突然手を止め、言った。「・・・おかしくねえか?。」 「ああ、なんでこんなに厳重にくるんであるんだ?。」 「いや、そうじゃない。これだけの布に包まれていたら、物自体小さく なっていてもおかしくないはず。なのに、これは掘り出した時の大きさと 全然変わらない。」 「どういう事だ?。」 「こいつを隠した者は魔法か何かで布を簡単に外せないようにした。 そいつを解かない限り、俺達は永遠にその作業を繰り返す事になる。」 「一体誰が、そんな事を?。」 「解らん。けど、今はこの魔法かなんかを解いて布を外す手を考え なければならん。」 「・・・って、どうやって?。」 「魔法を使える者。ここだとセルデゥス神が使えないかと。」 それに気づいたのか、セルデゥスが現れた。「よし、やってみよう。」 セルデゥスが魔法をかけると、包みは一瞬光り、そして消えた。  ユーリウスは改めて包みを剥がし始めた。「あ・・・。」 二枚ほど剥がすと、中から杖のようなものが出て来た。 「これは一体・・・?。」 「・・・これは、もしかして『アスクレピオスの杖』。そうでは ないか?。」 「え・・・それって、『オリエンタポリス神話』に出て来た、あっと いう間に傷や怪我を治してしまうという、あの杖か。」 「そうだ。建国以来行方不明になってはいたが。」  ユーリウス達は「アスクレピオスの杖」を携えて学者の元を訪ねた。 「教皇から依頼されていたのだが、やはりこれだったのか。」 「どういう事だ?。」 「実はな。この石板は最近発掘されたものではなかった。解読の術がなく 長い事放置されていたのだったがな。先日、教皇より『夢のお告げ』で この石板をどうしても解読したいと言われて、それで急遽解読に踏み 切ったのだ。そこで、これを教皇に渡して石板の解析結果を報告して ほしい。」 そう言われて、ユーリウス達は教皇の元へ杖と石板を届けた。 「また夢のお告げか・・・。」 「なあんで、俺らが持って行かにゃならんのだ?。使いッぱしりかよ。」 ジルカメスが文句を言う。「まあ、成り行き上、仕方ねえだろ。」 「ロナウハイドってさあ、超が付くほどお人よし、って感じだよな。」 フンヴォンもぼやく。 「何を言うか。俺は好意としてやっている。親切にすれば、後で倍に なって返ってくるかもしれないんだぞ。世の中とはそういうもんだ。」 「そうかあ?。俺に言わせりゃ、損している事の方が多いと思うけどな。」 「あっ、そう。無理に着いて来いとは言っていないんだけどな。」 「・・・分ったよ。んもう。着いて行きゃいいんだろう。」  教皇に石板の解析結果を報告し、杖を手渡した。暫く杖を眺めていた 教皇だったが、 「ロナウハイド殿。この杖はそなたが持つべきもの。そなたに預けて おく。」 「えっ。い、いえ、これは。」 「いや、これも『夢のお告げ』なのだ。この杖を探し出し、ロナウハイド 殿に渡せと。」 「・・・しかし・・・。」 「いや、持っていた方がよいだろう。いや、持っていなくてはならぬ。」 どこかで声がする。「大陸神ユーラント!?。」 ユーラントが姿を現した。 「ゲルマンからの連絡が未だ途絶えている。何かあったのかもしれない。」 「なんだって!?。くっそお。あの親父、どこほっつき歩いているんだか。」 「出掛けられてからだいぶ経ちますから、心配ですよね。」 オルケルタも義父であるゲルマンの身を案じる。 ユーリウスは少し考えた。「嫌な予感がする。」 「そうだな、何事もなけりゃいいが。」 「この歳で母親違いの兄弟が、って言われたら・・・一発ぶん殴って おくか。」 皆、目が点になった。焦ったジルカメスは 「心配なの、そっちかよっ!!。」 「いや、冗談に決まっているだろ。」
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