「お昼一緒に…」

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「お昼一緒に…」

私は、高木恭子。 社会人3年目のOL。21歳。 彼氏いない歴21年。 つまり、 男性とお付き合いをしたことがない。 学校時代は、 “ボーイフレンド”などいたことがなかった。 それでも社会人になったら、 環境が変わって色んな世代の人と関わるだろうから、私にも“出逢い”があるのでは、と期待していた。 しかし現実は、 残念ながらたいした変化はなかった。 とはいうものの、 まったくゼロだったわけではない。 私は高卒で就職したのと、 同じ職場には大学の2部に通っている先輩も多かったので、 社会人になって半年ぐらいしたころ、 大学の通信課程に入学した。 ほんとうは2部に通いたかったのだが、 体力に自信がなくて、通信にしたのだ。 通信制とはいえ、 テキストで学習するだけでなく、 地域ごとに“学習会”のようなものがあって、 参加したことがあった。 自分一人で頑張るより、 先輩に相談できたりするので、 一時期頑張って参加していた。 “学習会”の仲間みんなで、 一緒に遊びに行ったこともあった。 その仲間というか、 少し先輩なのか、 年上の人と親しくなった。 年の離れた妹がいるとかで、 「とてもかわいいんだ。」と言ってた。 だから、 私に対しても、 そんな感情を抱いて親切にしてくれているのかな、ありがたいなと思って接していた。 それが少しづつ変わってきた気がして (妹じゃなく、女性として見てる?)と感じるようになって、 何度かふたりだけであったり、 手紙や電話をかけあったりした。 でも、 “お付き合いしている” というほどの仲になる前に、 仕事が忙しかったり色々な事情で “学習会”から離れてしまうと、 それも自然消滅してしまった。 私も頑張って繋がりを保とうとするほどの気持ではなかったし、 たぶん向こうも、 何度かふたりだけで会ってみて、 同じように思ったのかもしれない。 だから結局、 社会人になっても、 学校時代とあまり変わらない、 行く先が、 学校から会社に変わっただけの 生活だった。 兄は、何故かモテる人だった。 (妹から見ればそうは思わないんだが、 ハンサムらしい) 高校時代の同級生と在学中から交際していて、後に結婚するのだが、 よく兄に、 「高校時代に彼氏も出来ないようなやつは、終わってる。」と言われた。 どうやら、私は、 “終わってる”らしかった。 高校を卒業して、就職した職場は、 男性が多く、 女性は少なかった。 配属された課は、 結構大きく、 100人ちょつといる課だった。 5つの班に分かれていて、 各班に女性は2~3人。 それなら、彼氏でもできそうなものだが、残念ながら若い人は少なく、 8割ぐらいが既婚者だった。 女性社員が少ないので、 お茶くみや電話番だけでも 結構忙しかった。 けれども、 “おじさん”が多いので、 かわいがってはもらった。 驚いたのは、 最初の二ヶ月くらい、 毎日のように誰かが 「お昼一緒にどお?」と お誘いがあることだった。 中には(この人何処の課の人? 知らないんだけど…) という人までいた。 まるで、 その建屋にいる独身男性が、 毎日入れ替わり来てるのか? と思うほどだった。 これまで、学校時代、 男子に、無視されていたわけではないが、 もてはやされた経験のない私は、 面食らった。 女子の先輩に聞くと 「毎年女子新入社員は、 みんなそうよ。 色々ご馳走して貰えるのはいいけど、 お腹壊さないように気をつけた方がいいわよ。」と言われた。 そうか… これは、 “恒例行事”な訳ね。 私が特別ではないんだ。 それが分かると気楽になり、 安心してご馳走になることが出来た。 その“イベント”が終わると、 「あれは何だったの?」 と思うくらい誰からもお誘いはなくなって、 同期や先輩、 時にはひとりで社員食堂で“お昼”が 当たり前の日々になった。
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