想う人には想われず…

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想う人には想われず…

入社した年のこと。 仕事にもだんだん慣れ、 半年ぐらい経つと、 一ヶ月の仕事の流れがつかめるようになり、 少しづつ気持にも行動にも余裕が出て来た。 (その頃、大学の通信課程にも入学した。) 社内にはちょつと広めの休憩所があり、 そこに卓球台があった。 私は、卓球は素人だったけれど、 同期の女子で、 高校時代卓球部だった子がいて、 彼女に誘われ、 その頃から時々昼休みに卓球をするようになった。 カットボールの出し方なんかをちょっと教えて貰うと、 結構勝つこともあって、 短時間の娯楽としては楽しめた。 メンバーは固定しているわけではなくて、 その日により若い男性やおじさん、 おばさん社員も混じったり色々だった。 その中の1人に“彼”もいた。 私は、“昼休みの卓球仲間のひとり”としてしか認識していなかった。 たぶん、2.3才年上の男子社員。 その人から、 ある日突然交際を申し込まれた。 全然そんなつもりはなかったし、 「好きな人がいるので…」と断った。 ところが、中々めげないというか、 しつこいというか、 「付き合ってるわけでもないんでしょう?」とくい下がってきて、 帰りを待ち伏せされたことがあった。 そこまで言いたくはなかったが 「あなたと付き合うつもりはないんで、 止めて下さい。」 と、はっきり告げた。 どんな人かも分からないのに、 好きでもないのに、 「とりあえず付き合ってみる。」とか、 出来ない性格なのだ、私は。 その辺が、 「かわいくない」と言われる所以なんだろうけど、 性格だから、仕方がない。 澤山さんのことだって、 確かにたくさん分かっているわけじゃないけれど、 課内旅行で話したり、 一緒に二人乗りの自転車に乗ったこともある。 (普通男性が前に乗ると思うのに、 何故か私が前だったが…) それで、 話が合う人だと思ったし、 一緒にいて楽しかった。 そういうのが、 “好き”っていうことなんじゃないかと思っていた。 “彼”は、 卓球仲間としては楽しめるけど、 それ以外のことを一緒にしたいという気持は全くなかった。 話したこともほとんどないし、 話して楽しかったと言う記憶もない。 どうして私を気に入ったのか分からないけど、 まぁ、好きになるのに理由はないというから… とにかく、 “彼”とのやりとりで、 正直かなり疲れた。 そういえば、 “告白”されたのって、初めてかも。 だからかな。 恋愛って、結構大変なんだな。 想う人には想われず、 想わぬ人から想われて とかくこの世はままならぬ…ってやつか…  そんなことを、思った。
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