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第五章 決意のかがり火
自室の床に寝そべって、今日のことを思い返す。その度に、後悔や気まずさが襲ってきて、感情のままに、ごろごろと床をダンゴムシのように転がった。
どうして、どうして私はあんなことを。
ノバラさんに、ひどいことをいってしまった!
あの時、自分の口からぶくぶくと沸騰しているような嫌な気持ちがあふれて、どうしても止まらなくなっていた。
ノバラさんの話を、途中から自分に置きかえていたんだ。勝手に怒って、勝手にやつあたりして、私って最低だ!
しかも、ノバラさんのこと「お父さんのいうことを聞いてばかり」だなんていってしまった。
あの本を借りているところを私がこっそり見ていたこと、ノバラさんは知らない。私が勝手にあの現場を見て、それを勝手に怒っただけ。
本当は「お父さんのいいなりになんてならなくていい」と、いいたかったのに。
ノバラさんは、私よりもずっと家のことで悩んでいた。たくさん本を読んで、自分と家族のことを必死で考えてた。
アルバイトでお客さんのために頑張って、賞までもらってた。
お父さんに「できて当然だ」なんていわれて、悲しかったに決まってる。
私は、それに腹を立てた。
でも、ノバラさんの家族のことに私が、ずかずかと首を突っこんでいいわけない。
ノバラさんは、猫を被るのがうまいっていっえた。でも、他にもいろいろ被っている。
笑顔の仮面だ。ノバラさんは本当の顔を隠してる。ノバラさんの心は傷だらけなんだよ。笑顔でいられるわけがないんだ。
どうしたら、ノバラさんが心の底から笑えるようになるんだろう。
窓の外でジワジワジワ、とセミが鳴いている。
一週間で枯れてしまうセミの乾いた歌声が、私の砂漠のような心にしゅわりと降り注ぐ。
だめだ、こんなんじゃ。ノバラさんの友達失格だ。
私が、ノバラさんのためにできること——。
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