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Report.01:花咲かじいさんという男性について
――今回取材させていもらうことになったのは、おとぎ話として有名な『花咲かじいさん』に出てくる主人公、その人だった。
私はこれほどの著名人に密着したことがなかったので、緊張もありながら、とにかく興奮していた。
例えば「ここ掘れワンワン」や「枯れ木に花を咲かせましょう」などの名言が生まれたのもこの逸話からだ。
だがどうだろう、ストーリーはざっくり程度にしか覚えていなかった。知っているようで知らないというのは先方に失礼にあたる。ジャーナリストの端くれとして私は改めてこの『花咲かじいさん』を調べた。
とある老夫婦が愛犬を大層可愛がっていると、ある日その恩返しとばかりに、犬が金銀財宝の埋まっている場所を教えてくれる。それをやっかむ隣に住むモンスター夫婦により、罪のない愛犬の命が奪われてしまう。
そんな悲しいエピソードに文字通り花を添えたのが、その亡くなった愛犬だった。埋めた場所に大木を生やし、その大木で臼を作れば金を生み、その臼を燃やして灰にすれば、その灰は枯れ木をも満開に咲かせてしまう。
夢に出てくる愛犬に導かれて、花咲かじいさんは大名に認められて幸せに暮らすことが出来る。大まかな梗概はこんなところだ。
しかし、私が今回取材を託されたのは「花咲かじいさんのその後」だ。かの有名な逸話については調べればいくらでも出てくるが、その後と言われると確かに調べても詳細は掴めなかった。
本人を密着し、それを解き明かすのが今回の私の任務だ。
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