三章 崩壊するハッピーエンド

40/51
前へ
/217ページ
次へ
証拠を提示しても一切動じないシエナに周囲も驚いていた。 マティルダに再び話を聞きたくとも、もうこの場にはいない。 (俺はどちらを信じればいいんだ……!) 今までにないくらい王家は揺れていた。 周囲から送られる軽蔑の眼差しはローリーにとっては耐え難いものだった。 (マティルダを取り戻しさえすればいい。まだ死んだと決まったわけじゃない!そうだ……!マティルダは死んでない) ローリーはそれを聞いてからずっと考えていた。 そしてある答えに辿り着く。ローリーは藁にもすがる思いだった。 マティルダの靴を見つけた騎士を呼び出して聞いてみると、やはりマティルダの死体を実際に見たわけではないらしい。 「崖の下までは調べていない……!マティルダがどこかで生きている可能性があるのではないか!?」 部屋でブツブツと呟きながらローリーは考えを巡らせていた。 「マティルダがいれば元に戻れるかもしれない!あの女を取り戻せさえすれば……っ」 ローリーは藁にも縋る思いだった。 もうこれしか自分に残された道はないのだ。 その場所に向かうことを父に提案しよう立ち上がった時だった。 目の前に光り輝く文字が浮かんだ。 『……マティルダは渡さない』 「!?」 ローリーが顔を上げると強い風が吹いた。
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

666人が本棚に入れています
本棚に追加