四章 最強の夫婦

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ベンジャミンの話はまるで御伽噺のようだと思った。 彼が〝師匠〟と呼ぶ人物が何者か気になったが、ベンジャミンのように仮面を取ったことはなかったそうだ。 物理的に人と距離を取ってコミュニケーションをしていたのは、ベンジャミンを傷つけないようにしていたのではないかと語った。 「僕もずっと仮面をつけたままでいようと思っていた」 「え……?」 「でも我慢できなかった。こうして直接触れて、話してみたいと思ったのはマティルダが初めてだったから……。マティルダに触ってみてもいい?」 「もちろんですわ」 いつもは黒い手袋を嵌めているベンジャミンだが、ハーフグローブを取って今は素肌が見えている。 恐る恐る伸ばされるベンジャミンの手をとって頬を寄せた。 手のひらが優しく肌を滑る。 興奮して走り回っていたせいか、ベンジャミンの冷たい手のひらは気持ちいい。 その上から重ねるようにしてマティルダは手を添えた。 少しずつベンジャミンが心を開いてくれているようで嬉しかった。 「話してくださってありがとうございます。ベンジャミン様のことが知れて嬉しいです」 「……!」 「これから一緒に過ごしながら、お互いを知っていきましょうね」 マティルダがそう言うと、ベンジャミンは一瞬だけ泣きそうな表情を見せたが、すぐにいつものように笑みを浮かべた。
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