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「ベンジャミン様、いつも話を聞いてくださってありがとうございます。ベンジャミン様と一緒にいるとなんだか落ち着きます。貴族の令嬢や王太子の婚約者なんてやめて、どこかでのんびりと平和に暮らせたらいいのに……」
『…………』
「ふふっ、ベンジャミン様にはつい愚痴を言ってしまいますね」
無機質な仮面に見つめられて、沈黙に耐えかねたマティルダはクッキーが乗った皿をベンジャミンの前に差し出した。
「今日は料理人に混ぜてもらってクッキーを焼きましたの。ベンジャミン様は甘いものがあまり得意ではなさそうだったので、甘さ控えめにしてみました」
『…………!』
「お口に合うかはわかりませんがどうぞ」
『……いただきます』
ベンジャミンはカップを持ち上げて仮面の前へ。
すると一瞬でカップの中身がマジックのように消えていく。
(いつ見ても不思議ね……)
仮面に阻まれているにも関わらずに液体は消えて、食べ物も瞬間移動するように口の中へといっているようだ。
仮面を外したくないという頑なな意志を感じていたため、マティルダも特に突っ込むこともなかったが、今回のクッキーが大きめだったせいか、ベンジャミンの頬がリスのように膨らんで動いていることがわかり、マティルダは笑わないように口元を押さえていた。
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