四章 最強の夫婦

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マティルダは怒りを抑えるようにして両手を握り込んだ。 そしてあの時、マティルダを容赦なく追い出したはずのローリーが平然と『連れ戻す』と言っていることに嫌悪感が湧き上がる。 「わたくしを連れ戻してどうするおつもりで?追い出したのは殿下達ではありませんか」  そう言うとローリーとライボルトは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべている。 謝罪でもするかと思いきや、自分の過ちを認めていないどころか責任転嫁している。 (呆れた……) どうやらベンジャミンから引き剥がして、マティルダを力技で連れ戻すつもりだったようだが、三人がかりでも負ける気がしない。 マティルダになってから積み上げてきたことは無駄ではなかったと思える。 なぜこの作戦が上手くいくと思ったのかを詳しく理由を聞きたいくらいだ。 マティルダが大人しく従うと思っていたのだろうか。 (でも普通の貴族の令嬢だったら、国に喜んで戻ろうとするのかしら……?ここでの生活は自分のことは自分でしなくちゃいけないもの。だからこんなに自信満々に言えるのね) 貴族としての地位も名誉も今のマティルダには、魅力的な提案には思えなかった。
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