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そっと頬に添えられる手のひら……彼の焦りが伝わるような気がした。
心臓がドクドクと音を立てているのが布越しに伝わっていた。
ベンジャミンはマティルダを心配して急いで駆けつけてくれたことがわかる。
「ベンジャミン様、落ち着いてくださいませ」
「マティルダに何かあったら僕は……っ!」
「わたくしは大丈夫ですから」
「……本当にっ、よかった」
俯いて今にも泣き出しそうになっているベンジャミンの頬をそっと指で撫でた。
そして両手で包み込むようにしてベンジャミンの紫色の瞳と目を合わせて、マティルダは微笑んだ。
ベンジャミンは再びマティルダの体を抱きしめたあとに、地面にへたり込んでいる三人を睨みつけた。
「一度でなく二度までも……生きて帰れると思うなよ?」
ベンジャミンの凄まじい圧にローリーとライボルトは震えている。
手のひらには黒い球体が浮いていた。
マティルダはこれを放った時に、魔獣が跡形もなく消え去ったのを見たことがあった。
恐らく木っ端微塵にするつもりなのだろう。
草木は激しく揺れて地面がひび割れていく中、マティルダがベンジャミンを制すように手を前に出して首を横に振った。
不満そうなベンジャミンだったが、マティルダが「ベンジャミン様が手を汚す必要はありませんわ」というと、黒い球体は消えていく。
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