一章 悪役令嬢が幸せになるとは限らない!

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そう言って笑ったマティルダに黒いウサギの仮面がじっとこちらと向いている。 確かに何故マティルダが毎日、城に通い魔力が空っぽになるまで力を使わなければならないのか疑問ではあるが、皆に感謝されるし「ま、いっか」という軽い気持ちでいた。 それに毎日毎日会社に出勤するような気分でもう習慣化されてしまっている。 友人の令嬢達にも「無理をなさらないで」と心配されていたが、なんとなく今日まできてしまった。 (やりがいがあるし、溜まった魔力を放出するのはスッキリするのよね……) そしてベンジャミンの魔法で城へと送ってもらう。 とは言っても、空中をスイスイと浮いて歩いている彼に城までエスコートして連れて行ってもらっている。 すぐ後ろからはガルボルグ公爵家の侍女達が馬車に乗ってついてくる。 やはり婚約者ではない男と二人きりでいる訳にはいかないからだ。 変な言いがかりをつけられても嫌だし、ガルボルグ公爵や夫人にも確認してもらいながら徹底的に気をつけていた。 もしベンジャミンと何かあればガルボルグ公爵にも「ガルボルグ家の者が軽率な行動を取るな!」と、こっぴどく怒られてしまうし、ベンジャミンと会うことを禁止されてしまうだろう。 気の抜ける唯一の時間がなくなることは嫌だった。
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