一章 悪役令嬢が幸せになるとは限らない!

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「ごきげんよう、マティルダ様」 「皆様、ごきげんよう」 「遅れてしまいますよ。マティルダ様、早く参りましょう」 「えぇ、そうね」 友人の令嬢達に声を掛けられるまま門の中に足を踏み込んだ。 (つ、ついに学園に入ってしまった……!) 〝悪役令嬢には絶対にならない〟という固い決意を胸にマティルダは令嬢達と共に談笑しながら歩いていた。 すると前からローリーが仕方なさそうにマティルダを迎えに来ていた。 「おはようございます、ローリー殿下」 「…………あぁ」 「いい天気ですね」 「……だな」  いつも笑顔で話しかけていたおかげか、ローリーが返事をしてくれるようになった。 それだけで数年の成果がみえるような気がした。 以前、マティルダの言うことは、ほとんど無視だったからだ。 最近になって挨拶をすれば返事を返してくれるのと睨みつけられなくなったという進歩はあったものの、友達のようにフランクな関係になることはない。 そして自分の役割は終わったと言わんばかりにスタスタと踵を返してしまう。 周囲にいる令嬢達は「信じられない!」「本当に婚約者なのでしょうか!?」「許せません」と次々に声を上げていく。
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