一章 悪役令嬢が幸せになるとは限らない!

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『こんなことばかりしているから、お人よしって言われるのよ』と、マティルダになる前に同僚にも散々言われていたが、人の笑顔をみるとこちらも元気になる。 そんな癖はマティルダになっても変わらなかった。 だが、こうやって善行を繰り返しているおかげでお茶会に呼ばれたり、人脈ができたりと悪いことばかりではない。 令嬢達と歩きながらこっそりと辺りを見回してみるが、まだヒロインの姿はない。 ゲームの画面で見ていた立派な建物の中に入り、中ばきに履き替えて教室に入る。 そこにヒロインの『シエナ』の姿があった。 (関わらない関わらない関わらない……絶対に関わらない!) 今までのことを踏まえて、ゲームの登場人物にはなるべく関わらないように心掛けていたマティルダだったが、ふと突き刺さるような視線を感じて肩を揺らした。 (なに……?なんだろう。今、誰かに見られていたような) 違和感を感じていたが、後ろを振り返っても誰とも目が合うことはなく、特に気にすることはなかった。 次の日からシエナが怒涛の勢いで攻略対象者を攻略していたことも露知らず、マティルダは友人の令嬢達とのんびりとした幸せな学園生活を送っていた。
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