一章 悪役令嬢が幸せになるとは限らない!

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しかし、なるべく表情に出すことなくマティルダは堂々と立っていた。 こちらに気づいたのか刺すような視線が壇上から降り注ぐ。 マティルダは挨拶をしつつ、ローリーの言葉を待っていた。 (大丈夫……!だって、わたくしはヒロインとも関わっていないし、虐げたりしていない!) にこやかな表情で顔を上げるが、心臓は飛び出してしまいそうなほどドキドキと音を立てていた。 そしてローリーから掛けられた言葉は信じられないものであった。 「マティルダ・ガルボルグ……お前には失望したぞ」 「何の話でございましょうか」 「しらばっくれるな。調べはついている」 「調べとは?」 「ふん……随分と余裕だな」 「身に覚えがありませんので」 「皆の前で恥を晒したいのなら構わない。馬鹿な奴だ」 いつもより饒舌にローリーのこちらを責め立てるような声にもマティルダは取り繕いつつも、心の中では動揺しっぱなしであった。 何か悪いことをした覚えもないため、胸を張って立っていていいんだと言い聞かせるものの、明らかにマティルダを敵意を送るローリーやライボルト達。 その姿を眺めながら〝違いますように〟と、祈るような気持ちでいた。 (……こんな展開があるなんて想像もしていなかったわ)
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