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「いいのです。私はローリー殿下の立場が悪くなることだけは避けたいから……」
「…………シエナ、ありがとう」
まるで観客席で舞台を見ているようだった。
悲劇のヒロインとそれを救った王子。
それと……そんな二人を引き裂く悪役の構図である。
しかし会場の令息と令嬢達の反応は乙女ゲームとは違っていた。
マティルダよりもシエナとローリーが共にいるところを多く見ていたことと、マティルダが何もしていないことを知っているのだろう。
「マティルダ様が邪魔になったのでは?」
「お二人がよく一緒にいるところを見たわ」
「シエナ様ってば、どういうおつもりなのかしら」
今のところ、全く根拠のないローリーの言葉にマティルダに味方している人が多いようだ。
(今までいい人になっておいてよかったー!)
しかしそんなローリーとシエナを庇うように現れたライボルトの姿を見てギョッとする。
ローリーと同じように鋭い視線を送るライボルトは壇上からマティルダを見下ろしながらニヤリと唇を歪めた。
(なに……この展開。もしかしてまた何かを言う気!?)
マティルダは緊張感にゴクリと喉を鳴らした。
「マティルダは、ローリー殿下に内緒でガルボルグ邸に男を連れ込んでいた」
「──はい!?」
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