一章 悪役令嬢が幸せになるとは限らない!

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「違うのです……!ローリー殿下、わたくしの話を聞いてください!」 「うるさい!黙れっ!」 「……………」 そう言うローリーの手は隣にいるシエナの腰にあり、体を寄り添うようにして密着させている。 (……裏切り者はどちらなのかしら) 仮にも婚約者に婚約の解消を迫るのに、他の令嬢と親しげにしているのはいかがなものかとつっこみを入れたくなってしまうのは致し方のないことだろう。 割り込みや弁解は許さないとばかりにローリーの口から一方的に語られていくマティルダを責め立てる言葉。 どうやらこちらの話は一切、聞く気はないようだ。 そんな時、ローリーの影から薄紫色のレースがふんだんに使われているドレスを着て、ホワイトゴールドの髪を綺麗に纏めているシエナが現れる。 眉毛は八の字になっていてピンク色の瞳は潤んでおり、今にも涙が溢れてしまいそうだ。 震える手を祈るように組んでいる。 「ローリー殿下、ですがマティルダ様は国にとって必要不可欠な存在ですわ!それに婚約を破棄するなんて……マティルダ様の立場が」 「心配するな、シエナ。これは致し方ないことなんだ」 マティルダを無視して進んでいく断罪のシナリオは止まることはない。
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