一章 悪役令嬢が幸せになるとは限らない!

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マティルダがシナリオと全く違う対応をとっても動じないシエナにある考えが思い浮かぶ。 (もしかしてシエナ様は……) しかしそれに気づいたとしても遅すぎたのだろう。 もうマティルダに選択肢はない。 シエナの外見とそれを取り囲む攻略対象者達を見ながらマティルダは頭を下げた。 「連れて行け」とローリーが言うと戸惑う騎士や婚約者の元から抜け出してきた令嬢達がこちらに向かってくるところが見えた。 しかしこのままマティルダと関わり、庇うようなことがあればローリー達に何を言われてしまうかわからない。 牽制の意味も込めてマティルダは自分の周囲に小さな雷を落とした。 ピタリと止まる足。 ショックを受けた騎士や令嬢達に向けて、マティルダは小さく首を横に振った。 それからマティルダが攻撃してきたと騒ぎ立てるローリー達にカーテシーをして背を向けた。 「──マティルダッ!」 「…………」 ローリーの怒号を無視して扉へと歩いて向かう。 「皆様、ごきげんよう」 無駄な抵抗かもしれないが、泣きながら去っていくことだけはしたくなかった。 パタリと閉まる扉と共にマティルダは肩を落とす。
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