一章 悪役令嬢が幸せになるとは限らない!

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もうこの国に居場所はないのだろう。 乙女ゲームからの退場である。 (…………これで〝元〟悪役令嬢ね) ガルボルグ公爵邸に帰ったとしても、ローリーの誕生日パーティーの夜の部にやってきた両親が話を聞けば『恥晒し』と言われて、どんな目に遭うかは目に見えている。 たとえ全てがでっち上げの嘘だとしても騒ぎを起こした責任を取れと言われそうである。考えるだけで面倒であった。 城の門をくぐり、マティルダはドレスのまま歩き出したが今更、悔しい気持ちが溢れて止まらなくなった。 じんわりと目に浮かぶ涙を振り払うようにして駆け出した。 もちろん公爵邸には帰りたくないが、お金も持っていないので何もすることはできない。 この姿では目立ってしまうと思ったマティルダは街の路地裏に入る。 とりあえず昼間でよかったと思った。 夜ならばすぐに人攫いにあってしまっただろう。 途中で痛む足に気づいてボロボロの靴を脱いでから歩いていく。 とにかく誰もいない静かな場所に行きたかった。 ひとつだけ心当たりがあるのは、ベンジャミンと行った森だった。 マティルダはそのまま歩いて森の中に向かった。 まさに天国から地獄へ落ちていっている気分だった。 「あれ……?」 マティルダはベンジャミンと行ったことがある花畑を目指したつもりだったが、何故か立っていたのは崖の上であった。
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