一章 悪役令嬢が幸せになるとは限らない!

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ブワッと体を持っていかれるような突風が崖の下から噴き上げてくる。 その風に煽られたのかマティルダの体の重心がグラリと傾いて足がもつれてしまう。 舞い上がる砂埃に目を閉じる。 踏ん張ろうと足を前に出したのだが、いくら経っても足先に何かが触れることがない。 ドレスの生地がパサリと大きく音を立てて目の前を舞った。 「え……?」 マティルダは小さく声を漏らした。 目の前には先程まで見ていた空があった。 (もしかして、わたくし落ちているの……?) そう意識した瞬間に、一気に恐怖が押し寄せる。 マティルダになる前も鳥を助けながらビルの屋上から落ちた時のことを思い出していた。 咄嗟に魔法を使おうとするものの手が固まったように動かなかった。 マティルダはギュッと瞼を閉じた。 体が真っ逆様に落ちていく中、聞き覚えのない男性の声が聞こえたのと同時に浮遊感が消える。 「…………マティルダ」 「!?!?」 名前を呼ばれて薄っすら瞼を開くとそこにはパープルグレーの髪が靡いていた。
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