一章 悪役令嬢が幸せになるとは限らない!

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マティルダの体はベンジャミンによって抱え上げられているのだと気づいて驚きに声が出せずに彼をじっと見つめていた。 「もしかして身を投げて死ぬつもりだった?」 「へ……!?」 死ぬつもりなど全くなく、ただ足がもつれただけだと説明しようとしたが、ベンジャミンが怒っているような気がしてマティルダは口を閉じた。 いつもと同じで表情が見えない黒いウサギの仮面がじっとこちらを見ている。 「ベンジャミン、様……?」 ここにいるはずのないベンジャミンが何故かマティルダを空中で抱え上げている。 想像もできなかった状況に首を捻ることしかできなかった。 それよりももっと驚くべきことはいつもは話さないベンジャミンが声を出したことだろう。 想像していたよりもずっと若々しい声だった。 彼の名前を呼ぶが、こちらを見ていることはわかるが表情は窺えない。 「そんなにあの男が好きだったの……?」 「あの男って?」 「君の婚約者……ああ、元婚約者だね」 マティルダはベンジャミンの言葉の意味を考えていた。 そしてすぐにローリーの顔を思い浮かべて首を横に振った。
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