一章 悪役令嬢が幸せになるとは限らない!

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「好きじゃないの?」 「えぇ……特に恋愛感情はないですが」 「……ふーん」 そう言った後、ベンジャミンは何かを考えているようだった。 「あの……ベンジャミン様、どうかされましたか?」 「ねぇ、マティルダ」 「は、はい!」 「もうアイツの婚約者じゃないんだよね?」 「そう、みたいですね」 先程、ローリーに婚約を破棄されて国外に追放されたことを思い出したマティルダは頷いてそう答えた。 するとベンジャミンの仮面からフッと音が漏れたような気がした。 (笑った……?ベンジャミン様が?) 意外な行動に驚いていると、ベンジャミンは崖の上へと降り立って、マティルダを地面を下ろす。 そして手を伸ばして、マティルダの頬をなぞった。 切り傷があったのか触れられた部分がピリピリと痛んでマティルダが眉を寄せる。 いつもと明らかに違うベンジャミンの姿に戸惑いを感じていた。 「捨てるつもりならマティルダの命、僕に頂戴」 「…………!」 「ねぇ、いいでしょう?」 マティルダはベンジャミンの言葉に大きく目を見開いた。 夕陽が完全に沈んで夜空には月が上り始める。 そして、ベンジャミンのハーフグローブをつけた長い指がゆっくりとウサギの仮面に伸びていく。 パカリと外れた仮面……。 ベンジャミンの端正な顔立ちが見えて、濃い紫色の瞳と目が合った瞬間、視界が真っ暗に染まった。
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