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「今度から気をつけないと……本当にごめんね。マティルダが傷つくことはもう二度と見たくないんだ。やっぱり光魔法を使えるやつを連れてきて治してもらおうかな」
ベンジャミンは独り言のようにブツブツと呟いている。
光魔法といえば、ブルカリック王国で唯一、光魔法を使えるのはシエナしかいない。
彼女を連れてこられても困るし、そもそもこの段階でヒロインは癒しの魔法を使うことはできないだろう。
(それこそ魔法の力を高めるには血の滲むような努力が必要だもの……)
学園でシエナが魔法で努力しているところをマティルダは見たことがない。
何をしていたのかは知らないが、少なくとも他の令嬢達からもシエナの噂は聞いていない。
珍しい光魔法を使える少女、それだけだ。
ベンジャミンが訳の分からない単語を呟き始めたところで、このままでは埒があかないとマティルダは勇気をだして声を上げた。
「あ、あの……ベンジャミン様!」
「どうしたのマティルダ?まだ痛む?カルバレー王国の薬師なら……」
「いいえ!そうではなくて、何故こんなにわたくしを心配して下さるのでしょうか?」
マティルダの問いかけにキョトンと目を丸くしたベンジャミンは首を傾げた。
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