二章 元悪役令嬢、新婚(監禁)生活スタートです!

29/42
前へ
/217ページ
次へ
普段はまるで砂糖のように甘く優しいベンジャミンだが、マティルダが外に行きたいと言うだけで過剰に反応をする。 一カ月経つと違和感を感じ始めていたが、マティルダは塔から降りる術はない。 物理的に外に出られないのだから考えても仕方ないと思っていた。 なんせ扉の外に足を踏み出せば下に真っ逆様だ。 崖に落ちそうになったこともトラウマとして頭に残っている。 (……ま、いっか!) そのうち頼めば出してくれるだろうと考えていたマティルダは、部屋を見回しながら暇を持て余していた。 今は朝早く起きてドレスに着替えて綺麗に髪を整える必要もなければ、王太子の婚約者でもないので次期王妃としての勉強、退屈なパーティーやお茶会に出席する必要もない。 公爵令嬢として両親の期待に応える必要も、ライボルトにもローリーに気遣う必要もない。 (ずっとニコニコしてなければならないから疲れるのよね。でも今は、どんな表情をしていたって、どこで寝転がっていても自由だもの!) それにわざわざ城に通って、魔力が空っぽになるまで電気を流し込んでいたが今はその必要はない。 しかし少し暗くなってきた時に電気を流し込むと城下町がキラキラとイルミネーションのように照らされているのを見ているのはとても好きだったことを思い出す。
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

666人が本棚に入れています
本棚に追加