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1.藤田陽葵
母が不慮の事故で亡くなったのは、藤田陽葵が小学5年生の時だった。
1年ほど経った頃、父・京助がテーマパークへ行こうと誘う。母を亡くしてからすっかり意気消沈していた京助が提案してくれたのが嬉しかった、京助も楽しそうにその日を待ちわびている様子なのがその気持ちに輪をかけた。
そして当日。ああ、そういうことかとすぐに判った。
現地で見知らぬ母子と落ち合ったのだ、間もなく義理の母と妹になる者たちだった。
母と出かける時より楽しそうにしている京助を見て、複雑ながらもほっとしたのを陽葵は覚えている。
きれいな女性だった、優しい笑顔が印象的で、こんな人が母になるのならいいなと単純にも思ったのだ。そしてその母によく似た娘も人形のような愛らしさで、こんな子が妹になったら自慢だと思ったことも覚えている。
だがその日はこれといった報告もなく、ただ1日楽しく過ごし互いの家に帰った。そして何度か食事や観光へ出かけることを繰り返し、いよいよ京助から結婚しようと思うと報告をされた時は、子どもながら「今更?」と陽葵はツッコミを入れたものだ。
母を失った悲しみを乗り越えるならいい、そう思い再婚を歓迎した。
しかし、幸せは長くは続かなかった──継母は暴力をふるう人だった。
初めは小突かれる程度だったが、平手が拳になり、回数が増え、蹴られるようにまでなり──一例を挙げればある日の夕方、陽葵が宿題をやっていると義妹がやってきて一緒にゲームをしようと誘ってきた。これが終わるまで待ってと言うと、義妹はふうんと言って部屋から出て行ったが、まもなく継母が怒鳴り込んできた。
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