8042人が本棚に入れています
本棚に追加
京助が史絵瑠のほうがかわいいことはすぐに判った。陽葵から見ても人形のように可愛らしい史絵瑠は声や仕草もかわいらしかった。そんな史絵瑠を京助はよく膝に乗せておしゃべりをしていた。陽葵にそんなことをしたのは本当に幼い頃だけだ、史絵瑠は2歳年下とはいえ再婚当初は小学3年生、その年代に抱っこなどされた覚えなど陽葵にはない、それだけ父は史絵瑠が大事なのだろうと思った。
対して陽葵の扱いはひどくなっていく。食べ方が汚いと同じ時間に摂ることはなくなった、テレビを見て団らんすることも許されなかった、トイレすら断ってでなければ使わせてもらえなくなった。
そうしてまもなく、陽葵は中学受験を勧められた。九州にある寮も完備された中高一貫校へ──いよいよ邪魔になって追い出されるのだと判った、しかしむしろありがたいと陽葵は努力を重ねる。受験を勧めながら塾へ行く提案はなく、ひたすら独学でだったが偏差値は70といわれる学校に無事合格を果たし、なんと成績優秀者として学費の免除までしてもらえるほどだった。
意気揚々と九州へ飛んだ。進学校と寮での暮らしは快適だった、多少意地悪な子もいたが、身体的な苦痛がないだけはるかに気が楽だった。
最初のコメントを投稿しよう!