第八章 私のヒーロー

2/25
前へ
/220ページ
次へ
その自信はどこからくるのだろう? まあ、私もその気になっているので、問題はないのだが。 でもこのまま私の気持ちを伝えたとき、彼が受け入れてくれるのか自信がない自分がいる。 そのためにも、コンペで絶対、採用されるんだ。 「だからほら。 公表しちゃおうよ」 「えっ、あっ。 もうすぐ会社ですよ!」 いきなり、駒木さんが私と手を繋いでくる。 振り払おうとしたが、指を絡めてがっつり握られていて、ほどけない。 「関係ないよー」 彼は今にもスキップくらいしそうなほどテンションが高くて、おかしくなった。 ……こうやって周囲に見せつけるように、ラブラブ出勤すれば、そうなるわけで。 「駒木さんと篠永さんって、どういう関係なんですか?」 仕事中、女性社員の問いに部内の大半の耳が集中した。 言うな、絶対に言うなと少し離れた場所の彼に、目で訴える。 せめて、恋人くらいにしておいて! そう願いながら、彼が口を開くのを待つ。 「僕と花夜乃さんは、結婚を前提にお付き合いをしてるんですよ」 口角をつり上げ、これ以上ないほどいい顔でにっこりと駒木さんが笑う。 ……言ったよ。 この人、言っちゃったよ! 最も恐れていた事態が起き、私は頭を抱えていた。
/220ページ

最初のコメントを投稿しよう!

423人が本棚に入れています
本棚に追加