第七章 あなたが幸せだと私も幸せ

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「キスの代わりだよ」 しれっと言って、おまけみたいにもう一回、私の鼻を押して駒木さんは離れた。 「はぁっ? 仮にも付き合ってるのあんたたち、キスもしてないのかよ」 東本くんから呆れられてしまったが、これっておかしいのかな……? 私は最近、こうやって駒木さんに鼻をぷにぷに押されるの、好きなんだけれど。 「そうだよ。 僕は花夜乃さんが本気になるまで、キスする気はないからね」 「へー、そうなんですか」 駒木さんが玄関へ向かっていき、東本くんもそのあとを着いていく。 東本くんからバカにされている気がするのは、気のせい、だよね? 「花夜乃さん、愛してる」 最後にいつものように投げキッスをし、駒木さんは出ていった。 「じゃあな、篠永」 そのあとを普通に東本くんが出ていく。 「付き合ってるのにキスしないのは、変なの?」 彼らがいなくなり、ぽすっとソファーに座ってクッションを抱いた。 でも、駒木さんはキスしたいけれど、好きでもない人とキスするのは気持ち悪いでしょって言ってくれた。 それは、そうだと思う。 なのになんで、あんなふうに言われなきゃいけないんだろ? 「……東本くんも私が知ってる、大人の男の人と一緒なのかな」 私をその容姿から、性的コンテツとしてだけ見ている彼ら。 彼らと東本くんも同じ? そうは考えたくないけれど、そうとしか思えなかった。
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