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ほっそりとした体にワンピースを纏い、日焼けしないように上から薄手のカーディガンを羽織っている。
そのあたりの美意識は文香と似ていて、さすがだなと感じた。
「慎也さんと正樹さんはお元気?」
「あー……、はい」
彼女が慎也とクルージングに行ったのを思いだし、私は微妙な顔で笑った。
それを見て、美香さんはクスクス笑う。
「妬いた?」
いきなりドストレートできたので、思わず私は彼女を見た。
美香さんはハットの陰で微笑んでいる。
……こっえぇ……。
「……ちょっと、ああいうのは控えたほうがいいんじゃないかな? って思いますよ。夫からは『何もなかった』って聞きましたけど、私は気分が良くなかったので」
「ふふ、ごめんなさいね」
ちっとも反省していない様子で言われ、私は「んー」と下唇を出す。
こりゃ、何を言っても利かないタイプだな。
そりゃそうか。長年夫に不倫されて、離婚せず自分も不倫してるもんな……。
ハートが強い。
「でも、関係は壊れなかったのね。いい夫婦だわ」
けどそう言われて、「うっ」となってしまった。
彼女がどんな顔をしているのかチラッと見ると、意味深に微笑んでいた。
赤城さんが決めたカフェに入り、四人でボックス席に座る。
皆目を合わさず、四人がそれぞれの方向を見てお水を飲み、メニューに目を落とす。
やがてコーヒー等、飲み物をオーダーしたあと、光圀さんが溜め息をついた。
「そういう風に、被害者っぽく振る舞うのはやめてくれないか? 僕が大柄なのもあり、まるで虐めているようだ」
赤城さんは鍛えているのか、胸板が張っていてしっかりした体つきだ。
柔道でもしていそうな身長と、がっちりめの体格なので、眼鏡を掛けて痩せている光圀さんと比べると、確かに真逆属性ではある。
「す、すみません……」
光圀さんは俯いたまま顔を上げない。
彼の事を「何を考えているか分からなくて不気味」と思っていたけれど、もしかしたら見たままの人かもしれない。
彼は中肉中背というか痩せ型で、特にセットもしていないストレートのショートヘアに、眼鏡。
着ている服はシンプルでモノはいいけど、お洒落に気を遣ってセンスがいいという感じではない。
まるで大学生がそのまま大人になったみたいな印象だ。
美香さんとは真逆な印象で、どうしてこの二人が結婚したのかちょっと気になると言えば気になる。
まぁ、人様の家庭の事は突っ込まないでおこう。
赤城さんはスマホをタップし、画像を彼に突きつけた。
「妻とあなたです。間違いないですよね?」
つい、私はその画像を覗き込んでしまった。
「あ」
以前私が慎也と正樹と三人で行った、お花のカフェで見た女性だ。
赤城さんの奥さんだったのか……。
思わず声を漏らしてしまったけれど、赤城さんは過敏に反応して私を見た。
「見覚えが? マンションに来ていましたか?」
「いっ、いえ! 別のカフェで見ただけで……」
しまった!
ものっすごい顔で睨んでくるから、思わずポロリしてしまった。
赤城さんは今にも殴りかかりそうな顔で光圀さんを睨んだあと、思いっきり息を吸って、深く長く吐いていく。
怒りをコントロールできるのは、偉い。
「へぇ、じゃあ、久賀城さん公認での浮気ですね」
いえ、私、公式じゃありません。
美香さんはこの盛り上がりでも、特に興味なさそうな表情で店内を眺めていた。
「……説明を、いいですか?」
光圀さんがまた溜め息をついて口を開いたのは、飲み物がテーブルに置かれたあとだった。
「恵里菜とは……」
「あぁ!?」
光圀さんがいきなり奥さんを呼び捨てしたので、赤城さんが唸る。
……そりゃ怒っちゃうのは分かるけど、全部聞くまで落ち着いて。
「す、すみません。ずっとそう呼んでいたので……。彼女とは中学生時代からの友人なんです」
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