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思わず、ぎょっとした。
まさか。嘘でしょう、小学生のテストじゃあるまいし。
うわさだけどね、と美岬は繰り返す。
「順位発表っていつだっけ?」
「今日の昼休み」
職員室の前に上位二十人の名前と点数が張り出される。
麗奈の成績がどのくらいかなんて知らないけれど、いくらなんでも。
麗奈はじっと席に座ったまま、だれとも話そうとしない。麗奈に話しかける人もいない。
奈緒も話しかけられない。
期末試験を最悪の体調で乗り切り、その反動で熱を出して休んでしまった。麗奈が約束を破ったあの日から十日も過ぎてしまっている。
いまそれを持ち出すなんて。それに、あの日送ったメッセージにはいつの間にか既読が付いていた。そのうえで麗奈はなにも言ってこないのだ。
裏切られた苦痛と、きっと理由があったんだと庇いたくなる気持ちと、なぜそれを説明してくれないのかと募る不審と──そういったあれこれが混じり合い、あんなにドロドロと膨れ上がった麗奈への感情は、いまとなっては醜い形に固まって溢れることもできなくなった。
チャイムが鳴って中村先生が入ってきた。
出席をとるとき、奈緒に体調は回復したのか訊ね、休んでいたあいだに返却された答案を昼休みに受け取りに来るよう言った。
そのまま数学の授業がはじまった。
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