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 この三人が呼びかければ、そんなに人が集まってくる。  ヒエラルキーがどうのって単純な話じゃない。みんなが楽しく過ごせる正しい方法を三人は知っているんだ。  休んでいたわたしを気遣ってくれたのも、そういう力のひとつだ。  三浦くんが「二学期の打ち上げはなんにする?」と言って「いくらなんでも気が早いわ」「まだ夏休みにも入ってないでしょ」と金元さんと水越さんがつっこみを入れる。  息のあったやりとりに笑ってしまう。  こういうふうに人を楽しませるセンスと能力もそうだ。  三人はいろいろなものを持っている。  わたしが持っているのは価値のないものばかり。  と、そこで三人が雰囲気をすこし硬くした。  三人が向けた視線を追うと麗奈が入ってくるところだった。  麗奈はこちらにチラと目をくれただけで、まっすぐ自分の席に座った。  試験前はあんなにいろいろと麗奈に声をかけていたのに、三浦くんは頬を掻きながらあさってを向き、金元さんは爪を気にする風を装っている。水越さんは心なしか顔が青ざめている。  教室の別のほうからもヒソヒソと聞こえる。  なんだろう、休んでいる間になにかあったのかな。  そう思っていると「ま、うわさだよ」と金元さんは水越さんに向かって言った。  なにがなんだかわからず、このまま突っ立っているのも変だけど、かといって立ち去るのもおかしな状態になってしまった。  困惑していると、 「鞄、いいの?」 と金元さんが助け舟を出してくれた。 「うん、置いてくるね」  妙な雰囲気の教室を移動し、席に着くと美岬がやってきた。 「奈緒、元気になった?」 「うん。ごめんね、心配かけて。ねえ、なにかあったの?」  美岬はすこし体を近づけ、声を落とす。 「五〇〇点満点だってうわさ」
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