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ついに、彼は意識を取り戻した。
私も彼の家族も大喜びだ。
しかし、手放しで喜ぶわけにはいかなかった。
彼は記憶があいまいになっていた。
自分がどうして事故に遭ったのか、思い出せないという。
私は、事故のことを教えようとした。
(私の誕生日を祝うために買い物に行って、はねられたのよ)
そう告げようか迷った。
しかし、私は言えなかった。
私は卑怯者だった。
私のせいで、彼はこんな状態になり、そして、記憶もあいまいになってしまった。
主治医も彼の家族も、嫌な記憶は無理に思い出させることもないだろうということで、この話題には触れなくなった。
彼も、事故のことを尋ねてくることはなくなった。
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