1. 宇治はまほろば

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 再び鼻の奥がむず痒くなり、立て続けにくしゃみを連発した。 「ごめんごめん。思いっきりくしゃみしないと、すっきりしないんだよね」 『ほんま勘弁してぇな、叶和はん』  抗議するみたいに、目と鼻の先にスマイルたちが集まって来る。 『危うく、鼻の穴に吸い込まれるところやったで』 『ええ年して、水洟垂らしてはるわ』 『目も真っ赤やで』 『花粉症ゆうの? なんでも不治の病らしいで』 『そらえらいこっちゃんか』 『えらいこっちゃ、えらいこっちゃー』  姿は見えても声は聞こえない。だけど、スマイルたちがわちゃわちゃとお喋りするのを想像するのは楽しい。 「どこのおっさんかと思えば、やっぱり叶和か」  振り向くと、木漏れ日の揺れる参道を、背の高い若者が軽快に駆けてくる。 「龍之介!」  しまった、油断した。よりによって、龍之介とは。
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