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枯れたと思った涙がまた溢れてきた。
拭っても拭ってもポロポロ溢れてくる。
「もし、よかったら、夏輝の心臓もらってくれない?」
「…っ…はいっ…一生大切にしますっ…」
心臓病だっていうのはうまく隠していたつもりだった。
なんの病気?って聞かれても心配かけたくなくて必死に誤魔化した。
でも…それは夏輝相手には無駄だったみたいだ。
その日の内に心臓移植は行われた。
夏輝の祖父母と家族に見送られ、手術室に入った。
そして…6時間にも及ぶ大手術は成功に終わった。
俺の親は何度も何度も夏輝の祖父母にお礼を言い、頭を下げていた。
俺の中でドクンドクンと力強く鼓動している心臓にそっと手を添える。
夏輝、聞こえる?俺は生きてる。夏輝「も」生きてる。これからは俺と一緒に生きていこう。
桜を本当に一緒に見ることは叶わなかった。だから、桜の花はきっとこれから俺を苦しめる。そう考えると桜は大嫌いだ。
でも夏輝のことは大好きだから、嫌いまでで踏みとどまるかな。
俺は大好きな「櫻 夏輝」と一緒に、今日も生きている。
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