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三度目の再会〜闇祓い/Side Ace【虐待要素有り】
「ゆー、今日は良い天気になりそうだよ」
窓から差し込む明るい光が
ベッドの端で丸まって寝ている優を照らす。
センターに入所して早二週間
腹や首の傷は落ち着いてきたけれど
優はまだ一日の大半を眠って過ごしていた。
寝返りを打つ度
サラサラと流れる綺麗な髪に手を伸ばすと
指越しに見えた白い頬が
不意にあの日の優を思い出させた。
───────────────────
あの日の事を
お前は覚えていないだろう
俺はあの日
お前を神の遣いだと思ったんだよ
二度と会う事はないだろうと思ったお前が
A校の厩舎で泣きながら
天使の様な歌を歌っていたんだ
それからの日々や
今こうして目の前に居る日々を思うと
運命ってもしかしたら
存在するのかなって…最近良く考えるよ
いや、違う
運命とは違うな
俺達の出会いはきっと
運命ではなく…
宿命
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16歳の夏休み
バカンスを過ごすべく
某国を訪れていた俺達家族は
俺と兄の空手の師範が演舞をすると言う
屋外にある日本主催イベント会場内にある
VIPエリアで涼を取っていた
「あと30分か…暇だ…」
デカい欠伸をして兄貴に睨まれた2分後
突然足元に石が転がって来た………様な気がしたが何かが違う。
「…?……イヤホン?」
辺りを見回しても誰も居ない。
兄貴は他の来客と話し込んでいる。
悩んだものの、何故かとても気になった俺はその謎の物体Xを拾い上げてみた。
やはりイヤホンの様だ。
ワイヤレスにしては少し大きい気もするが…
質感からしても明らかに良質の物だと察しがつくと、 綺麗な深紅色をしたそれをどうしてもこのままにしてはいけないと感じた俺は席を立った。
「兄貴、ちょっと落とし物届けてくる」
「はあ?ん…了解、急げよ〜」
「へいへ〜い」
俺は時計を確認しながら
エリアの出口に向かった
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人気のないエリアを小走りに進んで行く。
木々の隙間を縫うように抜けたその時…突然目の前の茂みから出て来た何かに思い切りぶつかった。
「っ…痛ってえ!」
『うっ…』
呻く様な声が聞こえて我に返る。
ぶつかったのは人だった。
「Σうわ、すみません!大丈夫ですか??」
手首を抑えて尻もちをついたままの相手の腕を取り立ち上がらせる。
「え……」
俺は思わず息を呑んだ。
真っ白な着物、真っ白な袴。
腰の部分にある深紅の刺繍部分の土埃を払う手も、サラサラと揺れる長めの黒髪の隙間から見える頬もまた、透き通る程白い。
伏し目がちにこちらを見た相手のふんわりとした視線は空を映した様な澄んだ色で…俺はあまりの美しさに言葉を失いかけた。
いやいや、しっかりしろ。
「すみませんでした、大丈夫ですか?怪我は?」
デレそうな気持ち(w)に鞭打ち話かける。
するとこちらを見る相手が
何か手を動かしていた。
あ…そうか、もしかして…
【あの…これ、お探しですか?】
一か八かの世界手話で声を掛けてみた俺は
ポケットの中にあったイヤホン=補聴器を相手に見せた。
ふわりとした視線がパアッと笑顔に変わる。
あれ?笑うと…幼い。
【良かった!落として困っていたんだ、ありがとうありがとう!ステージがあるのにどうしようって泣きそうだったよ、良かった!うわあ、本当にありがとう!】
キラキラした表情のまま、使い慣れた速さの手話で答えてくれた白狐の化身の様な綺麗な少年は、ピョンピョンと跳ねる様に何度も何度も頭を下げながら足早に去っていった。
……一時間後
空手の演舞の後の和楽器演奏で、ステージのど真ん中にある箏を弾き始めたのは
深紅の補聴器を左耳に付けたあの子だった
ソロから合奏へ、そしてまたソロへ
容姿からは想像出来ない力強く繊細な演奏に
俺は最後の最後まで目を奪われたままで…
アンコールの笙演奏が終わる時にはあの子は絶対に神の遣いだと信じて疑わなかった。
二度と会う事はないのだろう
でももしまた来年ここに来たら…
次は普通に話し掛けてみたい
手話を…完璧にして!
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今なら理解る。
失声症が出ていた頃だったんだと。
父親と居る時は声が出なくなる事が多いなら
父親にも暴力を振るわれていたんだと。
補聴器を落としたのではなく
投げ飛ばされたのだろうと。
今なら理解る。
ここに入って初めて身体を見た時…服で隠れる部分全てが傷や痣だらけだった事が、何を意味するのかも。
脚の付け根の切り傷に触れると
『Thank you, Master (ありがとうございます、ご主人様)』
と…何かのスイッチが入る理由も。
前髪を伸ばしその瞳を隠す理由も。
今なら理解るよ。
だからもう大丈夫、俺が全部消してみせる。
そんな記憶、全部塗り替えて
闇を払ってやるよ。
だから…
いつか俺と結婚して。絶対に幸せになれる
そしていつか、この話を聞かせたいんだ
な~んて!
さ、そろそろ起きて^^
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