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彼女は胸元の、ジュエリーとなった香水瓶を手に「もちろんです」と笑みを深め、
「ミーシャ様が多くのご令嬢の心を掴むこの場において、もっとも相応しいジュエリーですから。こちらの売り込みは、私にお任せください」
(本当、頼もしい限りだわ)
「よろしくね、エリアーナ」
十八歳の誕生日の前日に執り行われる予定となっている、聖女と悪女を決定付ける"審判の日"。
タイムリミットまであと二年ほどに迫った今の社交界では、私とアメリア、双方の派閥が出来ている。
もちろん、どっちつかずの中立派も存在しているけれども。
聖女かつ皇太子妃となった暁に"おこぼれ"にあずかるには、やはり近しくなくてはならないもの。
よほど欲のない家門で無い限り、中立派もいずれは私かアメリアのどちらかにつくことになる。
それが、貴族というものだから。
(それにしても、殿下も人が悪いわね)
視線を遣った先には、人々に囲まれ愛らしく笑むアメリアの姿。
一度目と同じく美しく成長した彼女が纏うのは、殿下の瞳を思わせるルビーレッドを使用した、この国一の縫製店が請け負った最先端の華麗なドレス。
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