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「あの女に騙されここで私を処刑したこと、きっと、後悔なさいますわよ」
途端に騎士団長が怒りを露わにし、
「アメリア様を"あの女"呼ばわりですと!? 重罪人が、不敬にもほどが――っ」
「不敬なのはあなたたちよ!!」
私は最後の力を振り絞り、ぐっと足に力を込め立ち上がる。
「聖女ネシェリの巫女はこの私、ミーシャ・ロレンツよ!」
「この……悪女があああっ!」
ザシュッ、と鈍い音を立てて、騎士たちに地面へと押し付けられる。
(ああ、愚かな人たち)
自分が騙されているとも知らず。
これからこの国が、どうなるかも分からずに。
「……絶対に、許さないわよ。アメリア」
「お姉様……どうか、罪を重ねるのはおやめください。私は――私の願いならばなんでもきいてくださるお姉様が、大好きでした。たとえその御霊が聖女ネシェリ様のもとに帰ろうと、私はお姉様を愛しております」
「私を愛するですって? とんだ"悪女"ね、あなたは」
「ミーシャ・ロレンツ」
この場の全てを制圧する深い声で、ルベルト殿下が私に歩を進める。
握られた剣に、私は彼の決断を悟った。
(馬鹿な人)
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