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回帰と再会
死後の世界とは、意外にも明るい場所らしい。
瞼の裏に感じた穏やかな光と、身を包む柔らく温かな感覚に、目を開ける。
刹那、私は呆然と呟いた。
「どういうこと……?」
見えた天井、正確には天蓋の内側はよく知る自室のもの。
がばりと上体を起こせば、間違いなく自分の生まれ育った屋敷の、自室にあるベッドの上だ。
ズキリと頭が痛む。
「私……あの時、ルベルト殿下に胸を……」
そう、胸を貫かれた。
急いで視線を落とすも、そこには可憐な寝衣だけ。
痛みも、ない。おかしい。
確かに貫かれた痛みと熱を覚えているのに――。
「え?」
胸元に寄せた手が視界に入り、違和感に声が漏れる。
記憶よりも小さい、少女の手。
思い起こせばこの寝衣も、随分と前に処分させたはず。
「まさか」
ベッドから飛び降り、鏡の前に立つ。
写っているのは間違いなく私。
けれど記憶にあるそれよりもはるかにうら若い、少女の姿。
「これはいったい……何が起きたの?」
「やっと目が覚めたか」
「!?」
振り返ろうとした私の頭上に現れた、私と同じ銀色の、美しい毛並みを持つ獣。
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