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狼だ。人の子供程の大きさで、今の少女姿の私ならばその背にしがみ付けるだろう。
突如として狼が現れたのなら、即座に逃げるべきなのだけれど。
眼前のそれが普通の狼ではないのだと、一目でわかる。
なぜならふわりと降り立ったその身体を、美しい青の薄光が包んでいるから。
「まさか……精霊?」
かつて聖女ネシェリが使役していたものの、今となっては神殿の教皇ですらその姿を見れなくなってしまった存在。
だが姿を見れる者がいなくなってしまっただけであって、精霊は今もこの帝国に息づいている。
ネシェリの巫女であればきっと、いつか彼らの姿が見えるだろうと。
そう、お妃教育で教えられた。
「ほう、知っていたか」
銀狼は感心したように金の眼を細め、
「我が名はリューネ。聖女、ネシェリの愛し子である少女よ。どうか我ら精霊族を救ってほしい」
「精霊族を、救う……?」
リューネと名乗った銀狼は「そうだ」と頷き、
「そなたは我々、精霊族が回帰させた」
「!」
どうして、と息を呑んだ私の心中を読んだかのように、リューネは口を開く。
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