1750人が本棚に入れています
本棚に追加
「その通りだ。だが我々精霊族は、聖女ネシェリの導きなくこの国を離れられない。だから全てが消え失せてしまう前に、手を打った」
「それが、私の回帰」
「そうだ。ついてこれたのは私だけだったが、皆、そなたの復活を心より願っていた」
「……それなら」
それなら、どうしてもっと早く。
前回の生の時に姿を見せ、助けてくれなかったのか。
(いいえ、気づけなかったのは私だわ)
聖女とは慈愛に祈り、献身の心を持って周囲を導く存在。
一度目の生の私は使用人に当たり散らし、他の令嬢に手をあげ、媚びる子息にも傲慢に振る舞いプライドを傷つけた。
金の聖女に、銀の悪女。
社交界でそう噂れていたのを、知らなかったわけではない。
(それもこれも全て、アメリアを守るために)
アメリアだけを拠り所にして、彼女しか見ようとしなかった"悪女"の私に、精霊が見えるはずもない。
「私になにを望むの?」
「ただ一つ。ガブリエラの巫女に打ち勝ち、今度こそネシェリの巫女として洗礼を受けてほしい」
「……そう」
身体の奥深くから湧き上がる憎悪と歓喜に、私は己の腕を抱く。
最初のコメントを投稿しよう!