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「あの、ね。私、どんな状況なのかしら。眠る前のこと、覚えていなくて……」
「まあ!」
ソフィーは青白い顔で驚愕を露わにすると、じわりと滲んだ瞳を隠すようにして視線を落とし、包んでいた私の掌をそっと擦る。
「お嬢様は庭園をお散歩中に突然倒れられ、三日間、眠ったままだったのです」
「三日間も……!」
「お医者様がいうには、どこにも悪い箇所は見当たらないと。自然と目覚めるまで待つしかないとのことで、僭越ながら、私がお世話をさせていただいておりました」
「そうだったの……。面倒をかけたわね、ソフィー」
「! 面倒だなんてとんでもございません! お目覚めになられて、本当に安心いたしました……!」
うっうっと泣き出してしまったソフィー。
私は宥めるようにして彼女の肩を空いた手で撫でながら、「ありがとう」と繰り返す。
(ソフィーには、うんと優しくしてあげなきゃ)
前の生では我儘ばかり言って、困らせてしまうことも多かったから。
「お見苦しい姿をお見せしてしまい、申し訳ありません。すぐにお紅茶とクッキーをお持ちいたしますね」
「ええ、お願いね。ソフィー」
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