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最初から兄に任せた宣言をしている私は、二人の傍らでときおり簡単な相槌を打ちながら、優雅にお茶を楽しむだけ。
三日ぶりに口にした紅茶が胃に沁み込んでいく。
温かい。
私の近くに果物やムースといった柔らかく食べやすいものが多いのは、運んで来てくれたソフィーの気遣いだろう。
(あとでソフィーにお礼を言わなくちゃ)
「そうでした、お姉様。お尋ねしたいことがあったのでした」
無邪気な声に、視線を向ける。
アメリアはにっこりと愛らしい笑みで、
「もうすぐルベルト殿下の十二のお誕生日でしたよね。殿下の洗礼式後に執り行われるパーティーで着られるドレスは、もうお決めになりましたか?」
(ルベルト殿下)
その名に、前の生での彼の姿がよぎる。
絹糸のように繊細なコバルトブルーの髪に、鋭利で知的な赤の瞳。
頭脳も、剣術の腕も一流だったというのに、すらりとした肢体の美しい青年だった。
大好きだった、仮初の婚約者。
私をガブリエラの巫女と決断し、この胸を貫いた、冷酷で憎い人。
(目覚めてからちゃんと確認はしていなかったけれど、今は彼の洗礼式前なのね)
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