デリカシーのない兄の利用価値

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 この国の王族は十二の誕生日に、神殿にて聖女ネシェリの洗礼を受けることになっている。 (つまり今の私とアメリアは、十歳ってこと)  ルベルト殿下が洗礼を受けた後に開催される、彼の生誕と洗礼を祝うパーティー。  その場で私達は正式にルベルト殿下の婚約者候補として、お披露目される予定になっている。 (オルガが入れない話題を口にするなんて、よほど堪えたようね)  せっかくのアメリアとのひとときを奪われ、さぞかし私に嫉妬の眼差しを向けているだろうと思いきや。  ちらりと横目で伺ったオルガは、ひと仕事やり切ったような清々しさで紅茶に口をつけている。 (本当、情けないんだから) 「そうだわ、アメリア。殿下のパーティーについて、お願いがあるのだけれど」 「なんでしょうか、お姉様。なんでもおっしゃってください」  献身的で無垢な笑みを浮かべるアメリア。  私はティーカップを戻し、にっこりと微笑みかける。 「殿下とのファーストダンス、アメリアに踊ってほしいの」  途端、アメリアが息を呑む。 「お姉様、今、なんと……?」
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