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私をぐるりと取り囲み、微塵の迷いもなく鋭利な切っ先を向けて来る。
「ちっ、違うの! 誤解だわ!」
「誤解?」
何度か顔を見たことのある騎士団長が、小馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
「今まさにその手にはテネスの花が握られているというのに、いったい何が誤解だとおっしゃるんです? ミーシャ・ロレンツ様」
「それは……っ!」
「お姉さま……!?」
「! アメリア!」
肩を上下させ現れた愛しい子の姿に、私は驚きつつもほっと安堵を覚えた。
(よかった、起き上がれる程度には回復したのね)
「見てちょうだい、アメリア。テネスの花よ! これがあれば――」
「お姉様! なんて愚かなことをなさったのですか……っ!」
悲壮に打ちひしがれ膝を折ったアメリアに、「え……?」と困惑の声が漏れる。
(どうして喜んではくれないの? この花があれば、あなたの病は――)
アメリアは歪めた瞳からはらはらと美しい涙を落とし、
「テネスの花を手折るなんて……っ! 嫌です! 私はお姉様がガブリエラの巫女だなんて、信じたくありません……!」
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