デリカシーのない兄の利用価値

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「今度の殿下のパーティーで、アメリアにファーストダンスを踊ってほしいのよ」  私とアメリアは、パーティーの主役であるルベルト殿下にエスコートされ、入場する段取りになっている。  通常ならば、最後に入場した主役の二人がファーストダンスを踊ることで、パーティーが始まるのだけれど。  私とアメリアという二人の婚約者候補を持つ殿下は、どちらか一方とファーストダンスを踊り、二曲目をもう片方と踊らなければならない。  とはいえ二曲目は、招待客も加わり、共に踊るのが通例。  つまりファーストダンスが、周囲に"婚約者候補"としての存在を印象付ける主役級の役割となる。 (前世では、私がファーストダンスを務めたのよね)  アメリアに「当然、お姉様が踊るべきです!」とおだてられ。  殿下に想いを寄せていた私自身も、やはり殿下に相応しいのは私だと満足して当然のように引き受けた。  それが後に、"謙虚なアメリアを脅してファーストダンスを勝ち取った悪女"などと噂されるなど、夢にも思わずに。 (同じ失敗は繰り返さないわ)
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