デリカシーのない兄の利用価値

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 それに、今の私は殿下への恋心より、私を殺した憎しみのほうが勝っている。  婚約者候補としての顔になるファーストダンスなんて、ごめんだもの。 「お姉様。やっぱりまだ、体調が優れないのではありませんか? お姉様が、殿下とのファーストダンスを踊りたくないなど……」 「いいえ、体調は問題ないわ。ただ、ずっと考えていたのよ。アメリアと私。どちらが殿下とのファーストダンスを務めたら、殿下にとってより良い結果になるか」 「それが、私ですか……?」  怪訝そうなアメリアに、私は微笑んだまま「ええ」と頷き、 「アメリアもよく知っている通り、私は公爵家の一員として幼い頃から教育を受けていたから、ダンスが得意だわ。アメリアは伯爵家の令嬢とはいえ、本格的にレッスンを受けたのは七つの時からでしょう? 先日、王城でのダンスレッスンでアメリアのダンスを見せてもらったけれど、まだ完璧とは言い難いわ」  正式なお披露目はまだとはいえ、私達はすでに定期的に王城での妃教育を受けている。  確かこの時期はお披露目が目前とのこともあり、王城でのダンスレッスンが増えた時期だったはずだと口にすると、 「ミーシャ!」
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