デリカシーのない兄の利用価値

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 それまで大人しくクッキーを頬張っていたオルガが、バンッと机を叩いて怒りの形相で立ち上がる。 「お前、アメリア嬢に殿下のパーティーで恥をかかせるつもりなのか!」 「とんでもありませんわ、お兄様。落ち着いて最後まで話を聞いてください」 (まったく、本当に面倒な人ね)  だけど今の私なら、上手に利用できる。 「今回の殿下のパーティーには、私達と同じ年ごろの子息令嬢も招待されると聞いております。おそらく二曲目は、彼らが多く混ざることでしょう。そこで、です。もし私がファーストダンスを務め、殿下と完璧なダンスをしてしまったら。デビュタント前の彼らが委縮してしまうとは思いませんか?」 「む……」 「そこで、アメリアです。彼女は確かにまだ完璧の域ではないとはいえ、充分に可憐なダンスを踊れます。お兄様もご存じの通り愛嬌もありますし、大切な殿下のパーティーを始めるにあたって、アメリアほどファーストダンスに相応しい令嬢はいないとは思いませんか?」 「そう、言われてみると……」  ふむ、と口元に手をあて、考える仕草をみせるオルガ。  アメリアは焦りを浮かべて、
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